=平成20年11月=

お施主様の声

あの『健康な家に住みたいな!』の著者外丸氏が当社の為に書いて下さっている連載が好評を頂きましたので
引続き掲載できる事になりました。

かえって不自然な自然住宅

- 自然素材の意外な落とし穴 -

シックハウスの犯人は、決してホルムアルデヒドだけではありません。私の家も含めてどの家も、さらに多くの物質に汚染されています。 通常、数十種類の揮発性物質が検出されるのが当たり前で、ひっくるめてTVOC(総揮発性有機化合物)呼ばれます。
 だからといって、慌てるのは早計というもの。濃度が低ければ心配には及びません。 厚労省から暫定指針値として公表されている400㎍/㎥以下なら、健康が脅かされる懸念はないでしょう。ご安心下さい。
                            
 では、無垢材で内装を仕上げた自然住宅の場合はどうでしょうか? 実物大の部屋を使った実験では、 指針値の10倍近い濃度に汚染されることがわかりました。反対に、木質系フローリングと壁紙で仕上げた普通の部屋は、 指針値の半分程度という良好な結果になります。皮肉なことに、自然住宅の方がTVOC濃度が高い というのですから驚きでしょう。
 なぜこんな結果になるのでしょうか? 専門的な話で恐縮ですが、 木材の中でも杉・松・檜といった針葉樹系の木材は、ピネンやリモネンなど、テルペノイドと分類される有機化合物を盛んに放散します。 要は、これが木々の香りの元です。
         
 しかし、日本人は総じてテルペノイドに寛大です。植物由来の天然成分であるばかりか、 テルペノいイドが人間の身体の中でも生合成されているからです。そんな物質が、危険なわけがない――。 そう信じたいのも無理ありません。

       
       

 それどころか、むしろ健康に良いと評価する意見もたくさん出されています。実際、テルペノイドの仲間には、 殺菌効果やリラックス効果を持つものが多いのです。ロシアのトーキン博士はこれらの物質をフィトンチッドと名付け、 森林浴の理論的根拠としました。オーストリアのモーリッシュ博士が提唱したアレロパシーという概念もほぼ同じで、 英語圏ではこちらで呼ぶ方が一般的です。
                 
 ここで注意したいのは、 植物は人間のためにフィトンチッドを放出しているわけではありません。他の昆虫・微生物・植物等から身を守り、 仲間同士で情報伝達の手段として利用しているだけです。ただし、植物と人間で分子レベルの活動に大きな差がないことから、 フィトンチッドは人間の生命活動にもシンクロします。
 この内、たまたま人間に好ましい作用を及ぼす物質もあれば、 好ましくない作用を及ぼすものもあります。同じ物質であっても、適量なら促進作用を及ぼすのに、 過剰になると阻害作用を及ぼすことだってあります。お薬を服用する場合を考えてみて下さい。飲めば飲むほど、 効果が上がるわけではないですよね? それと同じことです。
        
 ちなみに、代表的なテルペノイドであるピネンの濃度は、森の中でもせいぜい十㎍/㎥程度です。 一方、壁・床・天井を全て無垢材で仕上げた家の中の濃度は、何とこの100倍に達します! これでは、 自然な家を追求して、かえって不自然な家になっていますいくら森林浴が身体に良いといっても、これほど高濃度になると健康上好ましくありません
                            
 さて……。シックハウス対策の先進国であるデンマークのウォルコフ博士は、「総檜造のような家は要注意」と警告しました。こんなことをいうと、自然素材を信じている方からお叱りを受けることでしょう。しかし、先入観を排して科学的に考えれば、そういう結論に到達せざるを得ないのです。自然素材を使えばシックハウスを防げると、あまりにも過大な期待を寄せるのは禁物です

                 
                    
   

■400μg/㎥とは、1㎥中に400μgあるということを表しています。
μgは「マイクログラム」と読みますが、仏語の発音では
「ミクログラム」です。1μgは100万分の1gとなります。

   ■私たちが口にする食品中にも、 天然のホルムアルデヒドが存在します。
      特に、「干ししいたけ」や「たら」の血合い肉は含有量が多いようです。
     もちろん、健康上の問題はありません。
                          

 
                            外丸 裕 




                

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