=平成20年6月=

お施主様の声

あの『健康な家に住みたいな!』の著者外丸氏が当社の為に書いて下さっている連載が好評を頂きましたので
引続き掲載できる事になりました。

防虫剤の正しい使い方

- 袖を通すのは陰干ししてから -

 6月といえば衣替えの季節ですね。そこで、今回は防虫剤についてお話しましょう。
 東京都の調査では、世代を問わず8割を超える方が何らかの防虫剤を使用していることが判りました。 防虫剤の成分にも色々ありますが、最も使用が多かったのがパラジクロロベンゼンです。トイレの防臭剤に使用されることも多く、 独特のきつい匂いがします。
 パラジクロロベンゼンに関しては,厚労省から室内濃度の指針値が発表されていますが、知っていましたか?  恐らくご存じない方が多いでしょう。東京都の調査でも2割の方しか知りませんでした。
 指針値とは、この濃度以下の所なら一生いても安全という目安です。逆に考えれば、 この濃度を超えている場合はヤバイ!――ということに他なりません。ところが、指針値の10倍~50倍もの高濃度に 汚染された家が珍しくないのだから驚きです。狭いトイレの中で使うとさらに凄い……。何と指針値の100倍を遥かに超えます。
そんな家に暮らしているとどうなるか? 目・皮膚・呼吸器への刺激が続き、長期間になると身体がじわじわと蝕まれます。 貧血・肝臓障害・中枢神経系障害を起こすことが判っているほか、白血病との因果関係を指摘する声もあります。
                 
 注意していただきたいのは、防虫剤と一緒にしまっておいた服にも、防虫剤の成分が染み付いている点です。 衣装ケースや押入れの奥から引っ張り出してすぐに袖を通すのは健康上好ましくないため、屋外で2~3日日陰干しして 成分を飛ばした方が安全です。

           

しかし、こんな危険があったと知ると、急に恐ろしくなってきませんか? もっと安全なものを使いたいと考えるのは当然で、 天然志向が高まったこととあわせて樟脳を見直す声を聞くようになりました。樟脳とはクスノキから抽出される防虫剤で、 《カンファー》という化合物が主成分です。 ただ……。天然成分だから安全というのは大きな誤解です。樟脳は毒性が強く、経口摂取した場合にはわずか1gで幼児の致死量 となります。そのため、戦前は誤食による事故が後を絶ちませんでした。化学合成されたパラジクロロベンゼンが主流となり、 死亡事故は皆無になっています。何から何まで天然成分なら安全――。そう安直に考えることが、実は一番危険なのです。

    補足:最近では「匂いの付かない」ピレスロイドの使用も増えていますが、
       これについては次回に紹介します。

 もし安全にとことんこだわりたいのなら、いっそのこと、防虫剤なんか使わないで暮らしてみたらいかがでしょうか?
 大切な衣類に穴を開ける犯人は衣蛾や鰹節虫の幼虫で、主に動物性の繊維を食害します。成虫は洗濯物に卵を産み付けることから、 取り込む際に洗濯物を十分はたくだけでも予防効果があります。
                                
 また、成虫は家の中にも入り込んで来るため、 こまめな掃除を心がけたいものです。加えて、家の隙間をなくせば申し分ありません。
 もうお気づきですね? 高性能住宅なら防虫剤を使わずに生活できます。なぜなら、そもそも虫の進入路となる隙間がないからです。 事実、私はもう何年も使っていません。
 さて、お金を出してまで危険と背中合わせの生活をしたいと願う人はいませんが、そうせざるを得ないのが現実です。 でも、家を建てる際に性能を重視すれば、もう悩むこともないでしょう。
 もちろん、魔法の家なんてありません。安全に暮らしたいと願うなら、それ相応の工夫と注意は不可欠です。 しかし、努力すれば安全な暮らしのできる家とどうあがいてもできない家、皆さんならどちらの家に住みたいですか?



    ■パラジクロロベンゼン濃度の指針値は240μg/㎥です。 延べ床面積40坪の場合、
      家全体の空気中に、わずか0.076gのパラジクロロベンゼンが潜んでいるだけで
      赤信号となります。

                          外丸 裕 



                

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